河野 伸二郎 院長(河野歯科医院)のインタビュー

河野歯科医院 河野 伸二郎 院長

河野歯科医院 河野 伸二郎 院長 SHINJIROU KAWANO

神奈川歯科大学を卒業後、勤務医として幅広い症例を経験し、スキルを磨く。1989年、「仲町台駅」そばに開業。

歯科医師を志したきっかけと、これまでの経緯について教えてください。

少年期の入り口で「自分とは何か、どうしてここにいるのか?」を考え始めたのですが、常にこの考え方が自分の人生を動かしてきたように思います。そう考えるようになったのは、カルカッタの小学校にいた小5~小6の半年間です。そこはフランシンコ・ザビエルの名前を冠した学校で、英国人の教師からキリスト教に基づいた教育を受けました。もうひとつの大きな影響は、当時わたしがいた環境です。父は航空会社に勤めていてカルカッタの日本人コミュニティに属していました。小さな社会ですから、父のもとにはさまざまな方が訪ねていらっしゃいます。丸紅、日本郵船、三菱商事、三井物産…など名だたる会社の方が父と交わす会話を子供ながらに聞いていて、早くもどんな職業に就くべきか考えていました。そんな風に、自分はどんな風に生きていくのかを一人で考えていく独立心が、幼少期から養われていったように思います。
歯科医師になるまでには紆余曲折がありました。父の友人の話から最初に思い描いた将来像は、海外を舞台に大きな商談を動かす商社マンだったのです。文科系が不得手だったわたしは慶應義塾大学工学部に進み、セールスエンジニアを志しました。オイルショックを始めとするもろもろの事情から商社への就職はかないませんでしたが、「モノづくり」の関心はあったため日本発条に就職し、トヨタにあった同社の工場で自動車作りに関わりました。しかし元々独立心が旺盛なわたしは、常に誰かの指示を仰がないと仕事が進まないことに、少しずつ疑問を感じるようになりました。もし現在だったら、ベンチャー企業を興すことを考えたかもしれません。しかし当時は転職することですら、何かしらタブー視される風潮がありました。

親に再度学費の無心をしにくかったので、働きながら公認会計士として独立する道も考えました。しかしわたしの性格をよく知っていた両親は、「じゃ、医学部を受験したら?」とあっさり学費を出すことを承諾してくれました。家庭教師をしていた教え子は歯科大を受験しましたし、知人にも歯科医師は何人かいました。わたしの関心はむしろ歯科医師になることにありましたので、歯科大受験を決めました。

もう一つの母校である神奈川歯科大は臨床の研修に力を入れていました。ですので在学中にさまざまなことが学べます。また卒業後にお世話になったクリニックが激務でしたので、たった1年で相当の技術が習得できました。後輩の育成も任されていたので自信もつき、卒業後4年で開業できました。

卒業2年目で海外ボランティアを始められたそうですね。

歯科大の同級生がフィリピンでの支援プロジェクトに参加していて、その話を聞いたわたしはすぐに勤め先の院長先生に相談し参加の了承を得ました。元々は商社で海外を舞台に仕事をしたいと思っていましたから、話を聞いて居ても立っても居られなくなったのです。最初は虫歯治療から始め、その後は「フィリピン口唇・口蓋裂手術プロジェクト」に実行委員長として参加させていただきました。日常生活に不自由な障害を持ったお子さんがそのまま成長してしまうことに大きな問題意識を感じたのです。後発国では高額な治療費を個人が出すことは困難です。そこで短期の医療許可を政府に申請し、手術させてくれる病院を探し、専門医とも交渉しました。幸い幼少から英語が得意でしたので、ファクスを含む各種コミュニケーションを担当し、仕組みづくりに貢献しました。1985年当初は、ボランティア活動がまだ日本に定着していませんでした。歯科医院自体が相当忙しかったにも関わらず、わたしの意志を汲んで快諾してくださった院長先生には今でも感謝しています。
わたしたちが海外貢献に関わり始めたことで、母校の中にはNPO法人ができボランティアの仕事は拡がりつつあるようです。

歯周病の周知と治療に注力されています。こちらについてお聞かせください。

歯周病は万病の元です。患者さんにはこのことについてもっと知っていただきたいと考えています。老化によるものも大きいのですが、若いときからブラッシングを励行し、頻繁に歯石をとるなどのケアをすれば、病気の進行を遅らせることはできます。
歯周病は風邪と同様、さまざまな病原性微生物が口の粘膜から入っていく感染症です。糖尿病、高血圧、血栓との関係性が高く、歯周病の人はこれらの病気の罹患率が高いことが知られています。患者さんの血栓の中を細菌検査すると、歯周病菌が数多く見つかることがあります。

わたしは医科と歯科を連携させる事業の責任者としてプロジェクトを進めています。糖尿病患者で歯周病を持つ人を歯科医に、歯周病患者で糖尿病を持つ人を内科医に紹介する活動を進めてきたのですが、来月からこうした医科歯科連携の活動を本格的に進めます。何か心当たりがあれば、どうかご相談いただきたいと思います。当院のホームページでも、歯周病進行のメカニズムとチェックポイントについてわかりやすく解説しています。

お口の健康について、先生のお考えをお聞かせください。

口は、消化器、呼吸器の入り口です。摂食、嚥下の機能を持ち、ヒトの生命維持に関わる大切な場所なのです。本当は、そのことをもっと認識していただきたいと考えています。先ほど歯周病のところでも触れましたが、一方で日常的に感染を起こしやすい場所であるとも言えます。抵抗力が強い方もいらっしゃいますが、口で感染するとその菌は体内に入っていきます。ですので本当に健康になりたい方は、まず歯と歯茎の健康に心配りをしていただきたいと思います。
病気予防のカギは徹底的な歯磨きです。当院では患者さんごとに専任の歯科衛生士を決めて、その担当者が患者さんの健康状態を常にチェックします。職業、年齢、ケアの頻度、唾液の性質、食生活などの要素から診断し、患者さんごとに定期診断の頻度をご案内しています。

診察で心がけていることと、地域のみなさまへのメッセージをお願いします。

診察では、患者さんを親戚に見立て、どんな治療をすべきかを想定してお世話をさせていただいています。両親や子供ですと距離感が近すぎて、客観的になりにくいこともあります。わたしは歯科医師ですから、自分に置き換えると余計こだわりが強くなってしまいます。そこで親戚だったら….という仮定をするのが一番よい距離感だと考えます。
もうひとつは、患者さんのニーズを最優先することです。わたしは専門家ですので、どうしても自分の価値観を押し付けたくなってしまいます。そこを抑えて、医学的にずれていない範囲で患者さんのニーズを最優先したいと思います。

地域のみなさまには気軽にセカンド・オピニオンを聴きに来るつもりで相談にいらしていただけたらと思います。特に費用の掛かる大きな治療でしたら、いろいろと考えてしまうことも多いと思います。当院で診療しなくてもかまいません。どうか気軽に相談に来ていただけたらと思います。

※上記記事は2014.12に取材したものです。
情報時間の経過による変化などがございます事をご了承ください。

河野歯科医院 河野 伸二郎 院長

河野歯科医院河野 伸二郎 院長 SHINJIROU KAWANO

河野歯科医院 河野 伸二郎 院長 SHINJIROU KAWANO

  • 好きな言葉・座右の銘: 着眼大局、着手小局
  • 好きな音楽・アーティスト: ビートルズ。特に初期の作品が好きです。
  • 好きな場所・観光地: 横浜
  • 出身地: 横浜市
  • 趣味・特技: 空手。学生の頃からやっていて、有段者です。
  • 好きな本・愛読書: 司馬遼太郎の著書。特に「坂の上の雲」。幕末を舞台にしたものが好きです。
  • 好きな映画: 「サウンド・オブ・ミュージック」(1965年、米20世紀フォックス)

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