宮川 智行 院長（宮川歯科医院)のインタビュー

ずっと変わらず、この地で

実家は祖父の代から川崎で歯科医院を続けてきましたので、その影響が大きかったのでしょう。電子工学にも興味があったものですから、一度はその道に進んだのですが、子供の時から歯科医院で働く父の姿を見て育ったことで、やはり歯科への興味が尽きず、改めてこの道を選ぶことになりました。

1989年に『宮川歯科医院』は開院いたしました。上は100歳、下は3歳からと幅広い年齢層の方が通院されています。私と同年齢、もしくは上の方も少なくありませんね。開業して30数年が過ぎ、子供の頃に診ていた方がお子さんを連れて再び来院されるケースも目にするようになりました。その人たちからすると、ずっと変わらずやっているように見えるのでしょうね（笑）。

可能な限り患者さんの希望に沿うように

まずは痛みを取るところから始まります。大抵が痛みが出て「歯医者に行こう」となりますから。ただ、それも少し昔の話かもしれません。当院もメンテナンスの患者さんが中心となり、痛みが出たことで来院される方はずいぶんと少なくなりました。開院以来、完全予約制を採用しています。時間通りに始まりますので、ずっと通われている方は時間通りにピタリ来て、行きも帰りも待ち時間はほぼゼロです（笑）。

背景や価値観は人それぞれですから、患者さんの話をしっかり聞くことが大切です。その上で、保険診療の範囲というものもありますが、出来ること出来ないことを伝え、可能な限り希望に沿うようにしています。

長年、義歯（入れ歯）の治療を手がけてきて

お口全般を診ていく中で特に注意していることとなりますと、それは義歯（入れ歯）ということになるでしょう。「入れたけども食べられない」「食べない時は外してる」というのは、入れ歯にまつわるよく聞く話です。入れ歯は、我々の側の根気が問われる分野です。厚みが気になる方、とは言っても削ってはいけない部分がある方、などなど。治療を続けていくとその方の個性がわかってきますから、そのギリギリのところを探りながら都度都度手直しをしていくのです。ブリッジやインプラントを入れても、最後の最後には入れ歯になっていくケースも多いですし、“使える入れ歯”を作り続けることは意義のあることと考えています。

入れ歯も、噛み合わせを調整しないときれいに入りませんし、痛みが出るようになります。ですから、歯がある方もそうでない方にとっても、噛み合わせは治療の根幹と言えるでしょう。昨今、お口を拝見しますと食いしばりの跡が見られる方が多いのですが、その原因として多いのがマスクの装着によるものです。弱い力ですが、ずっとマスクでアゴの筋肉をおさえつけられてしまい、それがもとで食いしばっているんですね。本来、口を閉じた状態だと上の歯と下の歯は当たるものではないのですが、食いしばりが見られる方は、それがバチッと当たってしまっています。当然、噛み合わせの調整をおこないますが、ご自身で意識して気をつけることも大切です。どうしても難しい方は日中も着けれるマウスピースをこしらえるのですが、それでだいぶ改善した方もいらっしゃいますよ。

医療界全体で顔の見える連携を

私は都筑区の歯科医師会会長を務めさせていただいていますが、これからは“歯科”だけではなく、医療界全体として動かなければいけない時期に来ていると感じます。例えば糖尿病と心疾患については、お口の疾患と強い相関関係があります。歯科だけではなく、医科や薬科と連携して患者さんの情報を把握し、より効果のある医療提供体制を作っていかなければなりません。それはまた介護や看護の現場で働いてらっしゃる方も同様です。顔の見える関係を構築し、もっと気軽に連携をとれるようにすべきでしょう。

顔の見える連携ができると、例えば災害時の情報が集まりやすくなります。特に災害後、避難所等への滞在を余儀なくされている場面で、様々な方面からお声がけができるようになると、それは大きな力になっていくでしょう。ひとりの目線では気づかないことも多々あります。全体として、みんなで作っていくことが大切です。

これから受診される患者さんへ

長らくここで診療を続けさせていただいているのは、ひとえに地域の方々のおかげと思っております。これからも患者さんの笑顔のために尽力してまいります。お口の悩みがあればもちろんのこと、健康な歯を長持ちさせるためにぜひ当院をご利用ください。

※上記記事は2023年5月に取材したものです。
時間の経過による変化があることをご了承ください。