この道に至るきっかけと、これまでの経緯をお聞かせください。
私は、小さい頃からの夢だったトラックの運転手をずいぶん長い間しておりました。ところが憧れだった職業も、ただ、なんとなく日々を過ごしているように感じられるようになったのです。そこには、息苦しさのようなものもあったかもしれません。私はいつしか、「心底、これだけはやり遂げた」という充実感のようなものを求めるようになっていました。そこで、当時趣味でやっていたスノーボードで、一躍オリンピックを目指すようになったのです。結果としてオリンピックに出ることは叶いませんでした。しかし、その代わり、充分やりきったという満足感を得ることが出来たのです。ここに至り、「もうなんでも出来るぞ」と自信を付け、以前から気になっていたペット業界へと足を踏み出したということなんですね。しかし、入ってはみたものの、外で見てるのと中で見るのとでは大違いと言いますか、とにかく犬にも優しくないし、お客様にも優しくないというのがこの世界でした。実情を目の当たりにして愕然とするとともに、徐々に「このままではいけない」という思いが強くなっていき、その思いを形にしたのが、ブリ―ダー紹介型の仔犬販売をスタートさせることだったのです。
ブリーダー紹介型の仔犬販売に理由について、併せて、『スイートマッチング』のコンセプトをご説明ください。
従来の仔犬販売は、まず最初にブリーダーさんが出品し、それを販売業者が競り落とすペットオークションというものが間に入り、最後に陳列型のペットショップに仔犬が並んでいくというものです。ペットオークションは、日本独特のシステムと言えます。集まった大勢の犬の中には病気の子もいて、出品のために長距離移動を強いられた体力や免疫力の落ちた仔犬が、感染症にかかるリスクは皆無ではありません。
それから、飼い主さんのニーズとして、どうしても、より小さい仔犬を求めるというものがあります。それゆえ、ペットオークションにおいても、“早く”出荷せざるを得なくなるという側面があるのです。しかし、この“早く”ということには、大きな問題がはらんでいます。噛みグセや吠えグセなど、大きくなってからの問題行動がありますよね。仔犬は、小さい頃に兄弟間でじゃれあうことで社会性を身につけるものなのですが、この期間が不足することにより、将来の問題行動へとつながっていくのです。『スイートマッチング』ではその点を考慮し、生後60日まで、仔犬を親元に置いておくことを原則としています。
今や、野菜でも誰が作ったものかがわかる時代です。にもかかわらず、従来の仔犬販売のシステムはそれに適うどころか、解離している状態です。どんな人が、どんな環境で育てたのか。犬にも優しく、お客様にも優しく、お互いの顔がよく見える販売方法を模索して出来たのが、『スイートマッチング』なのです。
新しい販売方法を具体的に教えてください。
ここでは、お客様から問い合わせがきますと、まずその方のライフスタイルを把握することから始めていきます。どれくらいお散歩に行けるのかに始まり、はたまた、アレルギーの影響の少ない犬種はどれか。家に小さな子がいるからあまり大きくなる犬は困る。それらお客様の好みとライフスタイルにぴったり合う犬種を提案し、しかるのち、その犬種を繁殖しているブリーダーさんの元へ私も同道して直接見に行くという形です。また、昨今は、犬の遺伝病が大きな問題となっています。このため、ブリーダーさんに遺伝病の有無を検査してもらうことも並行しておこなっていきます。私も経験者ですが、病院に掛かる経費と労力は大変なものです。そうしたリスクを軽減するためにも、直接ブリーダーさんの元へと伺い、親犬を知っておくということが大切なのです。 そこに加えて、ブリーダーさんの人柄を知ることも非常に大事なことです。その人がどれだけ愛情を持ち、いかに健全に犬を育てているか。飼い主さんの側でも、それを知ることで愛情が深まり、幸せなペットとの生活につながっていくと私は思うのです。
アフターフォローの体制はどうなっていますか?
2011年に発足した『スイートマッチング』は、何かあった時に私が自ら赴けるよう、都筑区に青葉区、港北区と商圏を絞っています。買っていただいて終わり、ではないんですね。犬を飼うということになれば、動物病院を始め、トリミングサロン等も利用するようになる。私が知っている範囲で、「この犬種ならこちらのトリミングが良いですよ」といった情報を提供することも重要なサービスと認識しています。もちろん、購入時にはオリジナルの飼育説明書をお渡しし、十分な説明をおこなっていますが、それとは別に、何かあった時のフォローを充分におこなえてこそ、販売したものの責任を全う出来ると考えています。
最後に地域の皆様へメッセージをお願いします。
安易に事業を広げれば、必ず品質が犠牲になります。ですから、まずは自分1人で出来る範囲のことをしていくことが大事で、それから先、私と同じ考えを持つ方が現われてくれれば、このスタイルをもっともっと広めることが出来ると考えています。『スイートマッチング』のスイートは、「甘い」方ではなく、スイートルームにある、“ひとつながり”を意味するスイート(suite)を冠しています。ペットを通じ、皆がひとつながりとなって広がっていく。そして、この新たな販売スタイルが、この国のペットのあり方を変えていくと私は信じています。「犬を想う、あなたを想う」をコンセプトとして、みんなが幸せになっていけるように頑張っていきたいと考えています。
※上記記事は2014.12に取材したものです。
情報時間の経過による変化などがございます事をご了承ください。
犬を想う、あなたを想う。スイートマッチング 白井 一基 代表 KAZUKI SHIRAI
- 好きな言葉・座右の銘: 度重なる挫折、惨めな敗北。その積み重ねが一流をつくる
- 好きな音楽・アーティスト: Mr.Children
- 好きな場所・観光地: ヤビツ峠
- 出身地: 神奈川県
- 趣味・特技: バイク、スノーボード、サーフィン、ゴルフ
- 好きな本・愛読書: 東野圭吾
- 好きな映画: 世界最速のインディアン