この仕事を始めたきっかけをお聞かせください。
この仕事を始める以前は化学関連会社で洗剤の漂白成分などの研究をしていました。その際、発明者として研究の成果を特許にするために7件ほど特許出願をしたことがあったんですね。当時は弁理士の方にお願いをする側だったわけですが、その中で知的財産の重要性を知り、この仕事に興味を持つようになりました。その後、会社を退職し、東京都内の特許事務所や法律事務所の特許部門で働きながら資格を取得するにいたりました。『OXIA綜合知的財産事務所』は2008年に都筑区に開設しました。その少し前から都筑区に居を構えていたこともあり、地元のさらなる経済発展に少しでも貢献したいと考えたのです。
『OXIA』とは「One's=人の」「X=未知の可能性」「Intellectual property=知的財産」「Agent=代理人」の頭文字をとったもの。アイデア・発明の発掘から特許権利化、商品名やサービスブランドの商標権利化、権利の活用まで、お客様の価値ある知的財産の権利をサポートさせていただくという意味をこめ、この名を冠しました。
弁理士とはどんな仕事か簡単にご説明をお願いします
国内外の特許・実用新案・意匠・商標登録等の知的財産権の取得手続き、著作権を含む知財コンサルティング等の業務をおこないます。特許を取得する場合には「発明が産業上の利用可能性、新規性、進歩性を有すること」、「出願人が一番の申請者であること」などいくつかの要件を満たさなければなりません。まずは先行技術調査をして同じ発明・似たような技術が公開されていないかどうかの確認をします。そして、特許の要件を満たすと考えられる場合に、発明を詳細に説明するための特許明細書・図面を作成して出願します。さらに、特許出願をしてから特許取得までの流れの中で、審査官からの拒絶理由通知に対する意見書・補正書の提出、特許査定時の登録手続き、必要に応じて審判請求・異議申立て・審決等取消訴訟など様々な手続きをお手伝いしていきます。また、商標登録をする場合には、「同一・類似の他人の登録商標がないこと」、「識別力があること」など一定の要件をクリアできれば、同様に「最初の出願人のみ」が登録を受けられます。出願前の調査で同じ商標が既に他人に登録されていた場合は、逆に商標権者によって訴えられることもあるのです。このため、そのような先行登録商標の有無の確認、登録要件を満たすかどうかの事前調査をおこないます。そして、登録要件を満たすと判断できれば、商標出願のための願書を作成します。出願後の特許庁の審査で合格すれば、登録手続きをおこないます。
依頼にはどのようなものがありますか?
お客様からの依頼の中で最も多い知的財産の対象は、特許と商標登録になります。特許と同様に創作物を対象とする実用新案登録や意匠登録もありますが、現行制度ではライフサイクルの短い商品を対象とする実用新案登録や、物品の斬新なデザインを対象とする意匠登録はニーズが少ないようです。当事務所では、技術的な思想として広く特許で権利化を目指すことをお客様にお薦めしています。また、商標登録は創作物ではないためこれら特許等とは全く別の標識という観点から権利を取得してブランドを保護しておく必要性が高いです。お客様は国内のみならず海外の依頼人も多く、多くは欧米、アメリカの会社やドイツの研究機関などになります。特許庁のデータによれば、特許出願の9割方はいわゆる大手企業が占めています。当事務所においても出願の依頼件数の割合からすれば同様になります。開発にかけることのできる人材や費用の面を考えますと、この傾向は今後も大きな変化はないでしょう。一方、割合としては少ないかもしれませんが、都筑区の中小企業、あるいは個人から特許や商標の依頼もお受けしています。
個人のお客様の中には、本当の主婦の方もいらっしゃいました。過去には、子供向けの家具や、化粧用具、介護品などがありましたね。また、医師や歯科医師のお客様からの個人の特許出願の依頼も結構多いですね。例えば、薬の飲み忘れ防止法、医療品の美容用品への応用などユニークなアイデアもありました。通常、特許を申請するには審査請求料等々、諸々の費用がかかることになります。しかし、こうした小規模個人事業者や収入の少ない個人の申請については優遇制度というものがあり、手続きを踏むことで審査請求にかかる費用や特許料・国際出願料が減免されることがあります。手続き自体もそうですが、専門的な内容になりますので、こうしたこと関して適切なサポートをしていけたらと思っております。
御社の特長についてご紹介ください
近年、国を挙げて知的財産に対する保護強化の動きが見られ、知的財産権をめぐる環境は大きく変化ししつあります。お隣の中国の台頭はその最たる例と言えるでしょう。このような環境下、戦略的ビジネスチャンスの決め手となるアイデアの創出と知的財産権の取得、およびその活用の重要性は今後ますます大きくなっていくものと思われます。特許に関しては、国際出願という制度があります。特許というものは、その国ごとでしか保護されません。1度申請をすれば世界全体をカバーできるのであればそれが一番よろしいのですけども、国ごとに審査の制度や法律も異なりますから、日本は特許庁で、アメリカは米国特許商標庁でと、各個対応していくしかないというのが現状です。この点、国際出願は日本語で日本特許庁にでき、世界の指定した国(加盟国)に出願したものとして扱われるのでメリットが大きいです。国際出願の申請をしますと、その出願日から30ヶ月以内に各国での対応(どの国に申請するか、申請国の言語による翻訳文の準備等)を決めればいいという猶予ができることになりますので、その枠の中で大きなアドバンテージを得ることが可能になります。
日本国内のお客様の外国出願や、外国のお客様の日本への出願は、その国ごとの代理人とダイレクトにコミュニケーションを取り、あちらの意見を尊重しつつ、こちらの意見とすり合わせていくという交渉が必要になります。当事務所はそういった各国現地代理人の介在を要する出願を多く扱ってきましたので、その点において一日の長があると思っております。
外国からの依頼はほとんどがメールのやり取りだけで手続きが済みますが、国内の件、特に事務所近隣のお客様からの依頼の場合、無料相談から出願後も随時面談しながら手続きを進めることができます。街の特許事務所として是非活用していただきたく思います。
最後にお客様へのメッセージを
『OXIA綜合知的財産事務所』は、常にお客様のご要望に応えられるよう、クライアントファーストを胸にこれまで歩んでまいりました。どの分野にも通じることだと思いますが、仕事は、自分が慣れているもの、専門の分野を扱いたくなるものですよね。私に関しては化学分野の特許がそうでしたけれども、事務所開設当初から当然のことながらそのような依頼ばかりではありません。ですから、必然的に自分がそれまで携わったことのない分野について学び、そのニーズに応えていくことで、キャパシティーというものを鍛えることができたのです。今後も、お客様のご要望を第一に考え、お客様の知的財産活動を誠心誠意サポートさせていだきます。コンサルティングも承っておりますので、どうぞお気軽にご相談ください。なお、当事務所も本年12年目を迎え、多くのクライアント様からのご依頼を受けております。特許に関しては技術分野が競合することがあり、コンフリクトの問題が生じることもあります。そのような場合には依頼を受けられないこともありますので、ご了承頂きたくお願いいたします。
※上記記事は2019.5に取材したものです。
情報時間の経過による変化などがございます事をご了承ください。
OXIA綜合知的財産事務所 奥町 哲行 弁理士 TETSUYUKI OKUMACHI
- 座右の銘: Take the initiative to set a good example(率先垂範)
- 好きな場所: 水と緑の豊かな街
- 出身地: 兵庫県
- 趣味・特技: ウォーキング、卓球
- 好きな考え: Simple is best
- 好きな言葉: Necessity is the mother of invention(必要は発明の母)