サイ・クリニック 安藤 敬 院長 TAKASHI ANDO
日本医科大学を卒業後、虎ノ門病院外科、自治医大大宮医療センター(現さいたま医療センター)、聖マリアンナ医科大学 心臓血管外科に勤務の後、米国ジョージア州に留学。帰国後、横浜労災病院の部長を経て、2022年にサイ・クリニックの管理医師に就任。
日本医科大学を卒業後、虎ノ門病院外科、自治医大大宮医療センター(現さいたま医療センター)、聖マリアンナ医科大学 心臓血管外科に勤務の後、米国ジョージア州に留学。帰国後、横浜労災病院の部長を経て、2022年にサイ・クリニックの管理医師に就任。
学生の頃から心臓外科医に憧れていました。命の瀬戸際にいる患者さんを手術で救って、劇的に良くなっていく様子をたくさん見てきたからかもしれません。それからは心臓外科一直線。残念ながら救えなかった患者さんもいましたが、その人のためにも辞めちゃいけないと思って、夢中で走ってきました。
妻とは学生の頃から付き合っていました。結婚については尊敬する先生に「外科医になるならすぐか、10年以上働いてからのどちらかだ」と言われ、卒業式の前日に結婚式を挙げたんです。妻は看護師として働いていて、ずっと支え合いながら二人三脚でやってきました。
ここからはクリニックのブログにも書いていることですが、2022年のGW初日のことです。当直明けで帰宅すると、いつも明るい家が暗かったんです。おかしいなと思って電気をつけたら、そこに妻が倒れていました。
たくさんの先生方の懸命な治療のおかげで、妻は一命を取り留めました。そして闘病生活とリハビリを経て、どうにか意思の疎通ができるところまで回復しました。すると担当医の先生から在宅介護ができるかもしれないと言われたんです。けれども私のこれまでのような働き方では在宅で妻を介護するなんてできるはずがありません。いろいろな方に相談をしましたが、最後は恩師に想いを伝え、私は心臓外科医を辞めることにしました。
妻の介護をするために、土日祝日は休みたい。朝早勤務も夜勤も難しい。そんな限られた条件で医師として働くことができるのかと悩みました。それでもいいから、と声をかけてくださったのが、サイ・クリニックの理事長でした。せっかく続いてきたクリニックを安藤君に任せたい、君のやりたいように変えてくれてもいいから。そうおっしゃっていただき、2022年の11月から院長に就任させていただきました。
私は心臓血管外科医でしたから、これまで大動脈解離や動脈瘤破裂の患者さんをたくさん診てきました。多くが健康診断で高血圧を指摘されているのに、症状がないからと放置してきた方です。年齢だから仕方ないとか、数値は下がっていないのに薬を飲んでいるから大丈夫と思っている方も多い。ですが適正血圧というものがありますから、減量や減塩などの生活習慣の改善はもちろん、当面は薬を増やしてでも正常値を目指した方がいいんです。そこは口酸っぱくお伝えしていきたいと思っています。
前院長は漢方治療に特に力を入れており、私も手術後や不定愁訴の患者さんに漢方薬を使ってきましたし、漢方家庭医の資格もあり、これを継続しています。ただし、高血圧に関して言えば、随伴症状が漢方薬で治ったという患者さんはたくさんいらっしゃいますが、血圧の数値そのものを漢方薬で下げるのは難しい。そこはやっぱり西洋薬が有効です。中には西洋薬を使いたくないという患者さんもいらっしゃいますが、できるだけ丁寧に説明をしてご理解いただき、漢方薬と西洋薬をうまく併用するようにしています。
地域のクリニックというのはさまざまな症状の患者さんが来院されます。中には私にはわからない症状もありますが、患者さんの話をしっかり聞いて要点をまとめて別病院との橋渡し役にはなりたいと考えています。
サイ・クリニックは都筑区が制定された頃に開業され、当時はこの辺りには2軒しか医療機関がなかったと聞いています。最近は近くの個人クリニックが立て続けに閉院していますし、医療の最初の窓口として門戸を広げていく必要性をますます感じています。地域住民の方の高齢化も進んでいますから往診の範囲も広げて、とにかくどのような症状でもまずは受け入れる。そして治療の道筋をつけることが自分の責務だと考えています。
外科医をやっていた頃は、執刀医が主治医という考え方でしたから、24時間365日体制が当たり前の環境でした。新しい法律で医師の働き方改革が進むようですが、私のような50を過ぎた医師にはかつての風習が染み付いています。それが妻の介護をきっかけに、土日は休みで勤務時間は9時から18時という、それまでとは真逆の環境に身を置くことになりました。「医師たる者、何より患者を」という教えでやってきたので大きな葛藤もありましたが、やっぱり妻の介護に全力投球をしたい。これまで支えてくれた妻ですから。それによって患者さんに迷惑をかけてしまわないのか、そんな医者が「地域に貢献だ、かりつけ医だ」と言えるのだろうかという気持ちも正直あります。ですが往診で伺った患者さんが、そんな私の話を聞いて言ってくれました。「介護する家族の立場もわかる医者がいるというのは大事だよ。絶対に大丈夫。先生は必要だよ」と。その言葉にどれだけ勇気づけられたか。外科医の時も手術が成功した患者さんに手を握られて感謝されたことは何度もありましたが、それともまた違う気持ちでしたね。きっと今の環境にならなければ分からなったでしょうし、こういう想いをこれからも大切にしていきたいと思います。そして、僕一人ではなく”チームSAI”として責務を果たしたいです。
※上記記事は2023年5月に取材したものです。
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