ツチダ動物病院 土田 毅史 院長 TSUYOSHI TSUCHIDA
麻布大学獣医医学部卒業の後、都内動物病院に勤務。術式の腕を磨いて、1979年、港北区大倉山に「ツチダ動物病院」を開業。現在に至る。
麻布大学獣医医学部卒業の後、都内動物病院に勤務。術式の腕を磨いて、1979年、港北区大倉山に「ツチダ動物病院」を開業。現在に至る。
この地に開業して、早や45年になります。実のところ、私は公務員になりたかったのです(笑)
ですが、小学校の先生や中学校の先生に「獣医になるんだよ」なんて言われてね。大学で獣医学を学んでいましたが、やっぱり諦めきれずに、公務員の試験を受けたりもしました。しかしオイルショックで世情もすっかり変わりましてね。結局のところ、兄にも背を押されて、獣医師になりました。
もちろん、この道に進んでからは、同輩のだれよりも熱意を持って犬や猫たちと接して来ましたし、嘘いつわりのない獣医師であると胸を張れます。
動物は本来たくましい生き物です。もともと自然治癒力を持っているので、人間(飼い主)はゆったりと構えていれば良いのです。気持ちにもゆとりを持って飼うことが大切ですね。その自然治癒力を引き出すのは、過剰な医療ではありません。大量の薬物でもありません。もちろんいらぬ検査でもないでしょう。あの子たちに必要なのは、家族の愛情と満ち足りた環境。それを手助けする、少しばかりの獣医です。私は町医者で、彼らのホームドクターです。死ぬまで面倒を見る気概はあるつもりです。
ご存じでしょうが、犬や猫の年齢は、我々人間よりも数倍の早さで老いていきます。彼らの1歳は人間の17歳。8歳だと48歳。15年も生きれば、76歳となり立派な高齢者(犬・猫)です。
大学病院で癌だと診断されたのだけれど、手術をさせるべきでしょうか、と17歳の犬を抱きかかえてご相談に来られた患者さんがいらっしゃいました。17歳と言えば人間年齢で84歳です。その齢で、全身麻酔をし、メスを入れての施術…あなたなら、術式を受けたいですか?
ペットの数はもの凄い勢いで増え、それぞれの暮らしは迷走しています。いま一度、立ち止まって、考えてみて欲しいのです。
「誠実」という言葉が好きでね。そうありたいと思っているし、そのように生きてきた、と思います。困ったヒト(そのペットたち)を診てあげたい、それに尽きます。
45年間変わらない値段表と隣の診療方針も開業当初から揺るぎないですね。
共同生活を送っている、犬や猫たちは家族ですから、お互いが寄り添うような関係であって欲しいと思います。血液を抜いて、健康診断をするよりも、自然治癒力を高めることが、彼らにとって何よりの健康生活です。家族の愛情、穏やかな環境があれば、獣医の役割はその手助けをすることしかありません。犬や猫は飼い主をただひたすら信頼し、飼い主は獣医師を信頼する。三位一体になってこそ、真の治療が施せるのだと私は思います。
過度な医療行為と過剰な金額がしばしば問題になっていますが、自由診療だからこそ、超えてはならないものがあると、私は考えているのです。
この子たち(犬や猫たち)は飼い主に命を預け、飼い主がわたし(獣医師)を信頼する。三位一体の信頼関係が成り立ってこそ、治療は成り立つ。繰り返しになりますが、決して忘れてはならない大切なことなのです。彼らは、言葉には出来ないけれど、訴えてくるコトバがある。目を見てやってご覧なさい。必死に訴えてくるコトバに耳を澄ましてください。
『子供たち(犬・猫)から親(飼い主)へのお願い
1・話せない私達のために診療時は常に見ていて下さい。
2・私達は親から離れる入院を不安と恐怖で迎えます。よって親が先生に入院の必要性、入院状況の確認(面会)、24時間看護の状況(特に深夜の看護)等を聞いて安心出来たら入院させてください。
以上を心に留めて病院へ連れて行く、私達の心が分かる真の親になってください。
親の決めた道しか進めない私達なのだから』
犬や猫は「無口」でしょ(笑)
でもあの子たちは、目や仕草で一生懸命訴えかけているんですよ。飼い主のみなさんは、その声なき声に耳を傾けてあげて欲しいですね。
凄い医療=愛情ではないのです。犬に100万円掛けた、という有名人の方のコメントを拝見しましたが、そんなことは自慢することでないのです。犬に100万円も掛けた、というステータスに満足しているのは人間だけかもしれませんよ。
獣医というのは、話すことの出来ない動物の生命を預かる仕事です。
生き長らえさせることだけが、幸せでしょうか?
犬や猫の16歳は、人間の年齢に言い換えれば80歳です。管を通し、胃瘻をしてまで生かすことが、あの子たちの望んでいることでしょうか?
ペットは家族のひとりです。コロナ禍以後、ペットと暮らす方々は随分と増えました。そして、それらに関連してペットショップや獣医師、(ペット)保険や医薬品、フード類…いつしか、迷走するペットとの暮らしぶりが目に付くように思います。長けた商法に惑わされず、何がこの子(ペット)たちに本当に必要なのか、もう一度考えてみてください。
そして、こんな獣医師もいるんだ、という存在を心のどこかに留め置いて頂けたら嬉しいのです。
私はこの大倉山の地で、生きている限り獣医師でいます。
※上記記事は2024年11月に取材したものです。
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