この道を志したきっかけや、開園までの経緯をお聞かせください。
私自身、1999年から2002年までニュージーランドの国立公園でカヌーを使ったガイドをしていました。カヌーはもちろんですが、ニュージーランドや原住民の歴史についても大変興味があったんです。また、ニュージーランドにいた時にはマオリ族との交流もありまして、アウトリガーカヌーを通して色々なことを学びました。ニュージーランドのネイティブの人達は常に100年~300年先のことまで考えているんです。これから生まれてくる子供たちに何を残せるかと・・・。
その後アウトドアウエアメーカーのパタゴニアの方たちと自然環境について話す機会があった時も、次世代の子供に何かを伝えていきたいという話題になり、そういう思いが自分の中でだんだんと固まってきたんです。
日本とニュージーランドを何度も行き来しているうちに、次第にアイデンティティーも湧いてきて、今後の人生の選択の中の一つに、「日本で人のため、世の中のためになることをする」のもいいかなという思いも強くなりました。
それから、日本に帰るかニュージーランドに永住するか迷っている時に、もし日本に帰るなら大自然のメッセージを自分なりの方法で誰かに伝えたい、その矛先を子供たちに向けようと思ったんです。
そして日本に帰り、親子で一緒にカヌーとアウトドアを楽しむ「もあなキッズ自然楽校」の前身である「もあなくらぶ」を立ち上げました。その後、保育園理事長と知り合い、自然楽校設立当初だった私達の活動に共感いただき、保育園終了後の時間を「放課後の居場所つくり」の活動を同所にて行うこととなりました。
さらに幼少期の頃から自然の中で遊ぶことが子供たちの成長にとっては大切ではないかということで、外遊びを中心とした保育を行う保育園「もあな保育園」が始まりました。
何故ニュージーランドへ行かれたのですか?
高校生の頃から北海道へ行ったりと旅が好きだったんです。大学生になると今度はカヌーで旅に出かけていました。いつかはカヌーで仕事がしたいと思ったのもこの頃でした。カヌーは自力で大自然に進んでいけるし、日本中どこへでも行けましたから自分のモチベーションを高めてくれました。
実は大学卒業までは体育会系の野球部だったんです。卒業後は就職しましたが、競争のない世界に行きたかったんです。
26歳の時、自分を計りたいと思い、まだその頃日本人ガイドが誰もいないニュージーランドへ行ってみようと思いました。ニュージーランドには国立公園もあるし、ガイドの資格もありましたので、そこで働くこともできましたから。そしてニュージーランド初の日本人ガイドとして働くことになったんです。
もあな保育園はどのような保育園ですか?
都筑区はお子さんが沢山いる地域ですが、新しい街なので何となく都会的で冷たく感じたんです。教育熱心な親御さんも多いという理由から子供達が塾や習い事に週何日も通ったりもしてますし。せっかく町中いたるところに遊歩道や広い公園があり、緑あふれる街なので、この環境を活かして子供達が思いっきり自然を感じて遊べるよう外に連れ出してあげたかったんです。
子供たちを自然の中にしっかりと染みこませてあげたかったし、自分としても自然の中でしっかりと遊んでいく中から学ぶことが今後の人格形成にとってどれほど大切なことかということを実証したかったんです。
北欧で発祥の園舎を持たず森の中で幼児教育と保育行う「森のようちえん」というスタイルがあるのですが、当園もそれを取り入れ雨が降らない限り、毎日外に出て思いっきり体を動かして過ごします。
自然の中に置いてあげるだけで、意図的に大人の考えを強要せず、子供が持っている感覚や感性を信じ、そして引き出すようなかかわり方をしています。
そうすることで子供達が自分で遊びを作り出したり、友達同士協調しあったり、けがなどの危険を回避したりできるようになるんです。
「レイチェル・カーソン氏」の『知ることは体験することの半分にも満たない』という言葉通り、遊びでの実体験が子供達の持っている可能性をどんどん広げていくんです。
例えば木登りをしていて最初は一個目の枝まで登れた。怖くてドキドキした。でも次の枝まで登りたいという好奇心が生まれる。頑張ってみたら登れた。自分で出来たんだという自信がついた。
このような経験が大きくなった時に絶対その子の力となっているはずです。
今後の展望についてお聞かせください。
これからも自然の中で子供達と一緒に遊びたい、この仕事を楽しみたいと思います。代表の仕事が増え、だんだん現場へ出る機会が少なくなりましたが、子供達を外へ連れて行くだけでなく、いつまでもフィールドへ出ていたいです。
また、いつか個人として世界を旅したいですね!
最後に小さいお子さんの保護者の方へメッセージをお願いします。
最近の傾向としてご自分のお子さんを過小評価される親御さんが多いように感じます。お母さんがお子さんを囲ってしまうと子供ののびしろが小さくなってしまうんです。
もっとお子さんに期待してハードル設定を高くしてあげると、子供はもっと成長すると思うんです。
利便なことを消して自分でやってみる機会を増やしてあげると子供は自分で壁を乗り越え、だんだんやれることの幅が広がり子供に自信と達成感が生まれます。
冒険教育(アウトワードバウンド)を通して、自分の可能性やあり方、他人を思いやる心など、豊かな人間性を育むことが大事です。これからはコミュニケーションやリーダーシップといった社会で生きていける力を育てることが重要です。
子供達を外で思いっきり遊ばしてあげてください。擦り傷、切り傷は当然あります。服や靴が汚れてしまうのも当たり前です。それは子供たちがしっかりと遊んでいるんだと認識してあげてください。子供にとっては良いことなんだと。
そしてもっと地域のお母さま方に遊ぶことの大切さを知っていただき、「もあな保育園」の教育方針を理解していただける方が増えていっていただけたらいいなと思っています。
※上記記事は2010.3に取材したものです。
情報時間の経過による変化などがございます事をご了承ください。
もあな保育園 関山 隆一 理事長 RYICHI SEKIYAMA
- 愛読書: 長い旅の途中、星野道夫 著
- 好きな映画: グラン・ブルー
- 好きな言葉: 前へ
- 好きな音楽: ジャズ、テクノ
- 好きな場所: バンクーバー島、ニュージーランド、奄美大島
- 生年月日: 1971年12月8日
- 出身地: 神奈川県
- 血液型: B型
- 趣味: 音楽鑑賞(ジャズ・テクノ)、ライブ、特技、カヌー